by chance? or by design?

今日のby chance? or by design?は、工学技師のアシナガバチです。

アシナガバチは自分で建築資材を生成して、巣を作ります。
素材を植物や丸太や木の柵など色々なところから集めてきます。
そして、集めた繊維素をたっぷり含んだその材料をかみながらネバネバした高タンパクの唾液を加えて行きます。
出来上がったペースト状のものは、乾くと軽くて堅い丈夫な紙になります。
唾液には特殊な成分が含まれているので、出来上がった紙には熱を発したり、吸収したりする働きがあります。
そのおかげで、寒い日でも巣の育児室は適温に保たれます。
アシナガバチは、そうして少しずつ巣を作り上げてゆき紙製の傘で覆われたような防水の巣が完成します。
巣に並ぶ小部屋は六角形をしており、その形のゆえに高い強度とスペース効率を併せ持っています。
雨の多い地方のアシナガバチは唾液を多めに加えます。唾液には防水成分が含まれているからです。
とはいえ、雨をよけられそうな場所を選んで巣を作ります。
しかも、アシナガバチは、人間の製紙工場のように空気や水を汚したりしません。
建築科や学者たちはアシナガバチを研究し、軽くて強靭で、生分解できる上質の建築資材を作り出そうと試みています。

脳が砂粒ふたつ分ほどの大きさしかないこの生物が、これら驚くべき偉業を行っているのです。

豊田 稔